輪島塗に欠かせない漆は、漆の木の樹液。大雅堂産の漆ができる日はいつ!?
平成20年4月吉日、よく晴れた春の日に、輪島漆器大雅堂の社長や営業の有志がそろって
漆の苗木を大雅堂横の空き地に、植樹しました。
漆は、漆の木の樹液です。
漆の木が傷ついたとき、傷を治そうとして出る樹液は、漆の木のかさぶたの役割。
漆の木から漆がとれるようになるまでに、約15年かかります。
大雅堂産の漆が取れるようになるのは、いつ!?楽しみです。
漆屋さんに頼んでおいた漆の苗木は、岩手県浄法寺町からやってきました。
浄法寺の漆は、日本産漆の最大の産地です。
日本産の漆は、漆をとることが大変な労働であることと、外国産の漆が入ってきたことから、
次第に少なくなり、大変貴重な漆となっています。
輪島塗は漆の木は勿論、生地も天然木を使用している、樹木とは切っても切れない関係があります。
自然がはぐくんだ天然の素材から作り出される輪島塗は、樹木に支えられています。
輪島では、さまざまな団体が漆の木を植える試みを始めています。
私たち輪島漆器大雅堂も、輪島塗を守り伝える塗師屋として、輪島産の漆をいつか、使ってみたいと思いました。
今はまだ、細くて頼りない漆の苗木は、15年後には漆が採れるようになるそうです。
漆の木は、紅葉が大変美しいものです。
人によっては、漆の木に近寄るとかぶれてしまうそうですが、いつも漆に囲まれている私たち塗師屋は平気です。慣れっこですから。
でも、職人になりたての頃は、かぶれに悩まされた思い出がある人も多いものです。
輪島塗のイメージは、黒とか赤でしょうか。
とれたての漆は、なんと乳白色です。
この乳白色の漆は、空気に触れると硬化が始まり、茶色く変わっていきます。
漆の使われ方は工程により様々で、輪島塗のイメージの黒や赤は、最後の上塗りの漆の色です。
黒や赤の漆は、とれたての漆を加工して作られます。
とれたての漆は、不純物を取り除き、熱をくわえて水分をとり、撹拌(かくはん)して粒子を一定にし、
漆器に使われます。
そうして精製する途中の漆に、鉄分を加えると黒漆になります。
また、精製した半透明の漆に顔料を混ぜると、赤などの色漆になります。
漆は、時間とともに透明度が高くなるという性質を持っています。
色漆が使われている輪島塗は、色が鮮やかになり、黒漆は底艶が深みを増してきます。
いつか、大雅堂産の漆ができたら、何を製作しようか、今から大変楽しみです。
日本産漆の最大の産地・岩手県浄法寺町でも、漆の苗木を作る人が少なくなっているそうです。
岩手県浄法寺町からやってきた漆の苗木は、25本。
大切に育て、輪島塗とともに次代へつなげたいと、心から思います。
いつか、漆の美しい紅葉が見られるようになったら、皆様ぜひ見に来てください。
心よりお待ち申し上げております。
若島基京雄(わかしまきみお)
全国を行商して歩いた祖父・父は、旅先で大変可愛がって頂き、現在でも祖父・父を知るお得意さまが多数ございます。
祖父・父は、「物がなくても売る」達人 営業マンでした。
お客様の前で輪島塗の器の仕上がりのイメージを、すらすらと絵に描いて見せ、仕上がった見本が無くても注文を取りました。器の形や色、蒔 絵・沈金の模様まで、その場で細かくうち合わせができ、仕上がった品は、大変お喜び頂いたそうです。
私もそうなりたいと、自己流ながら勉強し、輪島の技法の全てを頭にたたき込み、
お客様の求める物のイメージを形にしたい、と思っています。
現在は、器物の 形から、蒔絵・沈金の図案までお客様のご要望に合わせ、
自分で作図して制作にあたります。
頭の中で見える仕上がりの姿を、木地師から蒔絵・沈金師に細かく 指定し、
喜ばれる、そして末永く愛して頂ける輪島塗を生み出していきたいと考えております。
輪島漆器商工業協同組合 組合員
石川県輪島漆芸美術館 友の会 事務局長
合気道 奥能登合氣会 会長
輪島漆器大雅堂株式会社 代表取締役