漆かぶれ。漆にかぶれたら、どうなってしまうのか、心配していたんです

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漆を扱う上で避けては通れないのが漆の”かぶれ”です

漆のかぶれはお客様にはほとんど影響ありません

…ですが安心して下さい
基本的に漆器を購入したお客様が漆にかぶれることはまずありません!

充分に漆が硬化した漆器のご使用で、漆にかぶれることはまずありません。

充分に漆が硬化した漆器のご使用で、漆にかぶれることはまずありません。

じっくり丁寧につくられ、しっかり漆を乾かした漆器は
漆の被膜がしっかり硬化しています
実際にはその後も年単位で徐々に硬度をあげていくのだそうですが、
初期の硬化がしっかりできていれば漆によるかぶれはまずおきません

ごく稀に、漆に弱い体質の方が初期硬化が不十分な状態の漆器に
接触してかぶれてしまう事例はあるそうです

漆かぶれは職人のみ

なので、漆かぶれというのは基本的に乾いていない漆を扱う
漆器を作り出す職人さんたちにしか縁のない話だと考えて下さい
かぶれやすい人は、漆の木の近くを通っただけでかぶれる、とか
漆の作業場にいるだけでかぶれるとも聞きます

輪島漆器大雅堂の裏庭に植えた漆の木

輪島漆器大雅堂の裏庭に植えた漆の木

かぶれてしまうと、肌は腫れ上がりあまりのかゆさに夜も眠れない、
かぶれがひどすぎて漆での仕事を諦めざるを得ない職人さんもいた
なんて話も聞いたことがありました

なので、私も初めて漆を扱う時はどれくらい漆にかぶれるのか、
かぶれたらどうなってしまうのか、それはそれは不安でした
そして、いざ漆を扱うようになってどうなったかというと

漆の実がなると、お茶にして飲むこともできます。

漆の実がなると、お茶にして飲むこともできます。

漆のかぶれは、なんとかなる

結論から言ってしまえば・・・
「なんとかなるっ!!」 です(笑)

聞いたことのある話によると、10人いれば

A:1人はほとんどかぶれない
B:8人はかぶれはするが、徐々に強くなる(耐性がつく)
C:1人は常にひどくかぶれる

だそうです

漆をかいた木。(大雅堂展示場入口でご覧頂いています)

漆をかいた木。(大雅堂展示場入口でご覧頂いています)

自分の場合は、80%の”B”でした
初めてかぶれた時は、うるしに接触した皮膚の部分に小さな水ぶくれの
ようなものが出来て結構かゆかったです

とんでもなくかゆいということはないのですが、常に数匹の蚊にさされ続けている
ような感じがあって、ついつい掻いたりこすったりしてしまいます

その為、小さな水ぶくれが破れてはまた出来ての繰り返しで、
良くなったり、またかゆくなったりと治るまで数週間程度かかったと思います
実際、かゆくて夜寝付けなかったり、夜中に目が覚めることもありました

ただし、かぶれも繰り返しているうちにその程度や期間は徐々に減少していき
耐性のようなものがついていくのも感じます

また、体調が良くないとかぶれやすくなるという話もあり、これは自分も実感しています
毎日、漆を触っている人はかぶれにくいという話も聞きます

いざ漆にかぶれてしまった場合の対応

いざ漆にかぶれてしまった場合どうすれば良いのか?
病院に行く、飲み薬を飲む、塗り薬を塗る、都市伝説のような民間療法を試す
などなどいろいろ選択肢はあります

程度や範囲がひどいかぶれ、顔がわからなくなるほどの顔面のかぶれなどの場合は
少しでも早く治したいものです

薬は種類や相性が合えば効果大でしょうが、人により様々だと思います

個人的な意見ですが、薬を好まない自分にとっては、自然治癒力一択です!
掻かない、こすらない、触らないが最も早く治ると信じています
まあでも自分は掻いてしまうのでやっぱりちょっと時間がかかります
(普通一般の方は、すぐに病院へ行って診てもらってくださいね)

そうやって、かぶれて治ってかぶれて治ってを繰り返しているうちに
ほとんどの人はだんだんと耐性もついていくのだと思います
薬を使ってしまうとこの耐性もつきにくくなってしまうのではと思っています

そして不思議なことに、ひどく腫れたり、水ぶくれが出来ても、よほどひどく掻いたりしない限り痕が残るようなことはありません

どんなに漆に弱い人でも、どんなにひどくかぶれたりしても、漆にかぶれて死んだという話は私は聞いたことがありません

漆は命まで取るようなことはしないようです

漆は塗りの工程や色などにより、沢山の種類があります

漆は塗りの工程や色などにより、沢山の種類があります

漆にかぶれない為には、漆に触らないこと

漆にかぶれない為に最も大切なことは、漆に触らないことです
漆を扱わないという意味ではないですよ、漆を肌に接触させないということです

ビニールの手袋をつけたり、長袖、長ズボンなどで肌を露出させないのは
最も簡単で最も効果のある対策です
それでも作業になれないはじめの頃は、気づかないうちにあちこちに漆がついてしまうものです

漆がついてしまった場合でもその後の処置次第でかぶれを防ぐことはできます
一番してはいけないのは、ついた漆をふき取るつもりで延ばしてしまうことです
かぶれる範囲を広げてしまう自爆行為です
灯油や揮発油などをつけてふき取る際もよほどきれいにふき取らないとかぶれることはあります

少し脱線しますが、漆を扱う上で注意する項目のひとつに油分をつけてはいけない
というのがあります
漆は油分があると乾きにくくなるという性質があります
なので、塗り面に油分が残っていたり、塗った後に油分(汗、唾なども)がつくと
乾燥に悪影響がでます

漆は、和紙でこして使用します(動画あり)

そして、かぶれとは漆の成分であるウルシオールと皮膚のタンパク質が
反応しておこるアレルギー反応らしいです

話を元に戻して、漆が皮膚に付いてしまった場合は、この現象を利用して
まずサラダ油などの油をつけます
そしてまわりに広げないようにふき取るのです
こうすることで漆の反応を鈍らせつつかぶれを最小限に抑えることができます

このように、漆を付けない、付けてもきれいにふき取るなど
ポイントを抑えていればほとんどかぶれることはありません

”研ぎ”作業はかぶれに要注意

それでも、私が経験してきた中でかぶれを防ぎきれない作業がありました
それは、”研ぎ”作業です

漆器は基本的に、漆を何層にも塗り重ねて作っていきます
そして塗って乾かした後には”研ぐ”という作業が必ずといっていいほどあります

水を使わずに研ぐ”空研ぎ”と、水を使って研ぐ”水研ぎ”があります
空研ぎでは、空気中に舞った漆の細かい粒子が肌に付着します
水研ぎでは、粒子を含んだ水分が肌に付着します

作業後に手洗いや、ふき取りは行いますが、目に見えない細かい粒子は
気づかないうちに気づかない場所に付着していることがあるようで
数日後に突然かぶれに襲われるということが度々ありました
これにはもう防ぎようがないといった感じです・・・

輪島塗特有の下地技法:布着せ本堅地

輪島塗特有の下地技法:布着せ本堅地

ウルシの木が属しているウルシ科に含まれる植物の中には一般的になじみのある、マンゴー、カシューナッツ、ピスタチオなども含まれています

これらの植物でもかぶれるという話も聞いたことがありますが、実際詳しいことは良くわかりません

自分は、マンゴーも、カシューナッツも、ピスタチオも全て大好きですが、これらにかぶれたことは一度もありません

ですが、もしもマンゴー、カシューナッツ、ピスタチオでかぶれてしまうような人は、漆には近づかない方が良いかもしれませんね

上にも書きましたが、ごく稀に漆にほとんどかぶれない人もいます
漆を肌につけてほったらかしにしていてもへっちゃらの人もいます
これは、先天的なものなのか、耐性による後天的なものなのでしょうか

漆の職人さんのお子さんは漆にかぶれない

漆の職人さんのお子さんは漆にかぶれないという話があります
遺伝ということでしょうか

ただ、小さいころから漆に触れたりしているうちに耐性がついて強いという可能性もあります

どちらかはよくわかりませんが、とにかく漆にほとんどかぶれない人はいるのです
更に漆にもかぶれやすい漆とかぶれにくい漆もあるのです
最近では、意図的にかぶれにくい漆に加工された商品もありますが、漆の産地によってかぶれやすさがあるのです

輪島塗の下地は、輪島特産の珪藻土を焼いた「輪島地の粉」と米のりを混ぜた漆を使う

輪島塗の下地は、輪島特産の珪藻土を焼いた「輪島地の粉」と米のりを混ぜた漆を使う

一般的に、中国産より日本産の方がかぶれやすいと言われています
日本産はウルシオールの成分が多く含まれており
中国産ではほとんどかぶれないのに、日本産ではかぶれてしまう人もいます
日本産でも産地や季節、さらに採取した年によって成分に違いがあるので
かぶれてみないとその強さはわかりません

さらに日本産の漆は非常に希少なので、一般的にはなかなか使用する機会はありません

実際、私もほとんど使ったことはありませんので、その威力の程はまだわかりません

以上のように、非常に恐ろしいイメージの日本産漆ですが
その分、仕上がりの良さ、艶や耐久性、さらに値段まで中国産などの漆に比べて
どれも勝ると言われています。

「漆」のおかげで堅牢優美な輪島塗ができる

そのように強い「漆」だからこそ堅牢優美という輪島塗の特性がだせるのでしょうね。これからも上手に漆とつきあっていきます。

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