畳のあるお部屋の中央に設置されるのが座卓です。
和室の床の間は、その家の精神的中心ですが、和室での実質的な活躍の場の中心は、なんといっても座卓です。
お部屋のまん中にある座卓は、主の自慢の逸品であり、そして、主の思いを伝えるものでもあります。
輪島塗の座卓には、落ち着いた雰囲気のものや派手なもの、また、実用的なものなど様々なものがあり、蒔絵、沈金、石目、乾漆などの輪島塗の技術を駆使して製作されます。
◎輪島塗の座卓の寸法
輪島塗の座卓の寸法の定番は、六尺・五尺・四尺・三尺の4種類あります。
私達は、今も、寸・尺をつかっていますが、わかりにくと言う人も多いので、センチに直してお話することが多くなりました。
六尺は、180センチ(180×100×33)です。
五尺は、150センチ(150×90×33)、四尺は、120センチ(120×90×33)、三尺は、90センチ(90×90×33)です。
では、どの大きさの座卓が、どれくらいの大きさの部屋にあうのでしょうか。
目安としては、六尺は、12~10畳間、五尺は、10~8畳間、四尺は、8~6畳間、三尺は、4畳半以下ということになります。
しかし、あくまでも目安なので、お部屋の雰囲気や置いてあるものにあわせてお求めになることをおすすめいたします。
また、ご注文にあわせて様々な寸法にお作りすることもできます。
特別注文品は、木地から新しく製作いたしますので、納品が定番品より時間がかかります。
基本的には、約6カ月、さらに、複雑な形や特別な仕上げ(蒔絵・沈金などの加飾)によっては、一年以上かかるものもあります。
新築のお客様の中には、家が出来てからご注文される方もいらっしゃいますが、特別にお作りする場合、家を建て始めるのと同じくらいにご注文されると家の完成と同時にお使いできることと思います。
◎座卓の形
座卓の形も様々です。主なものを列記してみます。
長角面取り角足型(大雅堂ではF型といっています) 天板の側面に至る角の所が押面といって8ミリ位の面取りになっています。足は、差込式です。シンプルで大雅堂では一番販売個数のある定番品です。
長角面取りそり足型 F型の角足がそり足に変わったものです。
長角丸足型 面取りはありません。足が円柱となっておりネジ式です。
猫 足型 足が猫の足のようにクルッと巻いた形になっています。このあたりから、価格がグッと高くなります。猫足は、朴の木の角材からの削り出しということ と、輪島塗の下地は刷毛で塗ることが出来ず箆(ヘラ)で押し付けるように塗らなくてはいけないため、複雑な形の猫足は、塗る面にあわせて箆のかたちを変え て均一に塗り上げなくてはいけないからです。どっしりとした重厚感のある形です。
幕付き猫足型(大雅堂では高麗型といっています) 猫足ですが、天板から足の先まで切れ込みが入っています。また、天板側面の下部にスカートのような幕板が付きます。大雅堂では、一番高級な形の座卓です。
そ の他、特別注文品として、様々なお客様の色々なご要望にあわせて木地から製作もしています。最近は、ダイニングテーブルのご注文も増えてきました。和室の ある家や、マンションが少なくなってきたためと思われます。木地から作るため、仕上がるまでに半年以上の日数がかかります。特別注文される方は、早めのご 計画の上、余裕のあるご発注をお勧めいたします。
◎輪島塗の座卓の取扱い
中央:錫布目 両側:布目乾漆
輪島塗の座卓は美術工芸品でありながら、実用品でもあります。
座卓の表面の仕上げ方法によって、実用的なものから飾り的要素の強いものまで色々ありますが、基本的には、すべて、実用品です。
輪島塗の表面仕上げ技法の中で実用的なものといえば、乾漆、石目、布目などがあります。これらは、表面がザラザラしていて長い線のような傷が入りにくいのが特長です。
また、大雅堂が開発し石川ブランドとして登録されている錫布目や、姉妹技法の錫石目などは、多少の傷ならお客様ご自身で直せる利点もあります。
そ れでは、表面仕上げがピカピカで、蒔絵や沈金の入っている座卓はどうでしょうか。鏡のようなので、すぐ傷が入るようで怖くて使えないという方がいらっしゃ います。
でも、よく考えてみると、傷の入らないものはありません。どのようなものでも傷は入るのです。
輪島塗は、ピカピカと艶があるので、どうしても傷が 目立ってしまうのです。
確かに陶器を置いて引っ張れば傷が入りますが、気を付けてお使いいただければ、思うほど傷は入らないものです。
傷 が入った場合は、艶上げ直しをお勧めいたしますが、実は、一本の傷の修理も百本の傷の修理も修理代金は変わりません。
艶を上げるときには、傷のある面全体 に摺り漆をするので、座卓の天板に関していえば、側面まで傷が入っていない限り、例え千本の傷でも艶上げ直し代金は変わらないのです。
どうしても傷が目 立って見るに忍びないということになった時に艶上げ直しに出すことをお勧めします。
傷 とは別に、「なんだか艶がなくなってしまった」というお話をおうかがいすることがあります。
実は、これが要注意なのです。
お手入れの時に化学雑巾などで拭 いていたというものです。
この場合、初めの頃は艶があってキレイになりますが、だんだん油などが付いてきて艶がなくなってしまいます。
こびりついた油を取 るのはすごく大変で、場合によっては、蒔絵・沈金までも描き直しとなってしまうこともあります。
そ のほかに、濡れたタオルで拭いたら茶色いものが付いたということもあります。
この場合の可能性として一番高いのは、太陽光(紫外線)による漆の劣化です。
紫外線による艶失せの場合は、なるべく早く艶上げ直しをしたほうが代金が安く仕上がります。
そのまま放置しておきますと、劣化が進み、上塗漆の層を越えて 中塗漆層に達してしまい、上塗からやり直しということになってしまいます。
そうすると、劣化した漆を研ぎ落として中塗、上塗をほどこしたあと、蒔絵・沈金 もやり直しということになってしまい、艶上げ直しの代金より修理代金が高額になってしまいます。
紫 外線の影響を受けないようにするには、カバーをかけるとか紫外線の入らない部屋に置くか、あるいは、窓ガラスをすべて紫外線を透過しないものに変えるなど の方法がありますが、簡単なのは、カバーをかけることです。
カバーをかけておくと、ホコリもかからないので、一石二鳥ということになります。
傷 が入るのが、どうしてもイヤだというお客様には、ガラスを置くことをお勧めしております。
ガラスを置く場合には、漆面に直接ガラスが接触しないように小さ く丸く切ったフェルトなどを5カ所くらいに挟んで空気が行き来できるようにすることが重要です。
直接ガラスを置いてしまうと、漆面にガラスがくっついてし まうこともあるのです。
くっついたガラスを無理やり剥がすと漆も剥がれて見るも無惨な結果になってしまいかねません。お気をつけ下さい。
座卓は修理やリフォームをして、どうぞ末永く何代にもわたって、ご愛用下さい。
輪島漆器大雅堂では、座卓の修理・リフォームを承っております。
美しく、もしくは機能的に、現在の生活スタイルに合わせた修理・リフォームを。
詳しくはこちらでご紹介しています。
大きく重い座卓の運送についても、楽々簡単に送って頂けるように専用箱などをご用意いたしております。
若島基京雄(わかしまきみお)
全国を行商して歩いた祖父・父は、旅先で大変可愛がって頂き、現在でも祖父・父を知るお得意さまが多数ございます。
祖父・父は、「物がなくても売る」達人 営業マンでした。
お客様の前で輪島塗の器の仕上がりのイメージを、すらすらと絵に描いて見せ、仕上がった見本が無くても注文を取りました。器の形や色、蒔 絵・沈金の模様まで、その場で細かくうち合わせができ、仕上がった品は、大変お喜び頂いたそうです。
私もそうなりたいと、自己流ながら勉強し、輪島の技法の全てを頭にたたき込み、
お客様の求める物のイメージを形にしたい、と思っています。
現在は、器物の 形から、蒔絵・沈金の図案までお客様のご要望に合わせ、
自分で作図して制作にあたります。
頭の中で見える仕上がりの姿を、木地師から蒔絵・沈金師に細かく 指定し、
喜ばれる、そして末永く愛して頂ける輪島塗を生み出していきたいと考えております。
輪島漆器商工業協同組合 監査役
石川県輪島漆芸美術館 友の会 事務局長
合気道 奥能登合氣会 会長
輪島漆器大雅堂株式会社 代表取締役