様々な伝統工芸がありますが、本当にすべての工芸が後継者の育成に頭を抱えています。輪島塗でも同じです。輪島塗が大変だということは、それを支えてくれている道具や素材、原料、そして、それらを作ってくれる人達が、さらに大変だということです。輪島の職人さんは、それらをある程度ストックして、仕事にかかれますが、道具や素材、原料の職人さんは、今、その仕事があって売れてはじめて生活が成り立つのです。よほど沢山売れるか、すごく値段を高くしないとやっていけません。輪島塗をみてみると、以前のように、一点で数多く売れる注文はめっきり減って、一点で、職人技術を凝縮したものが売れるという状態です。これでは、今、現在活躍している職人さんでないと太刀打ちできません。数多く売れる一点を考え出すことと、既存の商品が数多く売れ、それも一回や二回ではなく定期的にあるという方法を考え出さないと職人は育ってきません。さらにいえば、一軒や二軒の塗師屋がそれをやっても、産地はなくなり、道具を作る職人さんもいなくなってしまいます。需要がなくなってしまったから、仕方がないと、消えゆく運命なのかと、ふと、思ってしまいます。ん~!でも諦められません。今、あるのです!瀕死かもしれませんが、輪島のみんな、そして、関係する人達が頑張っています。堂々巡りの何とかしなくっちゃ、、、この輪廻から脱却する!昔聞いた言葉がよぎります。皆を救うことは大変だが、それぞれが自分一人さえ救えば、たった一人救えば、皆が救われる。誰も何もしてくれません。してほしいことを自分がやるしかない。今年、ここ30年募集もしなかった社員を、見習いではありますが大雅堂に迎えました。やってほしいことは山ほどありますが、焦らず、じっくりとやっていきます。それぞれの塗師屋が、一人雇えば、組合員だけで130人増えます。それぞれの塗師屋が一人雇うだけの売上を上げれば、130人増えるのです。単純計算ではありますが、頼らず、よし!という気概を持って立ち上がってほしいです。非常に難しいのは重々承知しています。私たちも、もう一人と言われれば、今は出来ません。でも、一人は雇用しました。頑張るしかありません。心引き締めて頑張ります。
若島基京雄(わかしまきみお)
全国を行商して歩いた祖父・父は、旅先で大変可愛がって頂き、現在でも祖父・父を知るお得意さまが多数ございます。
祖父・父は、「物がなくても売る」達人 営業マンでした。
お客様の前で輪島塗の器の仕上がりのイメージを、すらすらと絵に描いて見せ、仕上がった見本が無くても注文を取りました。器の形や色、蒔 絵・沈金の模様まで、その場で細かくうち合わせができ、仕上がった品は、大変お喜び頂いたそうです。
私もそうなりたいと、自己流ながら勉強し、輪島の技法の全てを頭にたたき込み、
お客様の求める物のイメージを形にしたい、と思っています。
現在は、器物の 形から、蒔絵・沈金の図案までお客様のご要望に合わせ、
自分で作図して制作にあたります。
頭の中で見える仕上がりの姿を、木地師から蒔絵・沈金師に細かく 指定し、
喜ばれる、そして末永く愛して頂ける輪島塗を生み出していきたいと考えております。
輪島漆器商工業協同組合 監査役
石川県輪島漆芸美術館 友の会 事務局長
合気道 奥能登合氣会 会長
輪島漆器大雅堂株式会社 代表取締役