輪島塗の塗り技法は、どういう技法ですかとかどこが他の産地の塗り物とちがうのですかという質問をよく受けます。輪島塗の塗り技法は、輪島地の粉による布着本堅地です。
下地技法にはいろいろありまして、渋下地、炭粉下地、錆下地、本堅地、本地、蒔地など色々あります。混ぜるものによって別の名前がついたりします。たとえば、ベン柄を入れたらベン柄下地というようにです。まだまだあると思います。
古い漆器で漆塗膜がそのまま剥がれているものを見ますが、それは下地技法の違いによるものです。渋下地や炭粉下地、錆下地のものが多いようです。キズが入ったり打ち込みが出来たりしたものをそのまま使っていると、水が染み込み剥がれるということになります。
これらは、修理が非常に困難です。修理のために漆を塗ると塗った漆に引っ張られてまた剥がれてきたりヒビ割れが入ったりしてしまいます。
その点、本堅地や本地、蒔地は、めったに剥がれるとことはありません。しかし、使っているうちに熱による細かいヒビや艶失せ、白にごり(やけといっていますが)などがでてきます。使えば何でも必ず劣化します。その様な時は早めに修理に出していただけると、漆器はより長持ちします。では、どのあたりで修理にだすとよいのでしょうか。白にごりのあたりで修理というのがいいように思います。細かいヒビがでてしまうと、修理の際にヒビがなくなる層まで研がないときれいになおらないのです。そして、この研ぐという作業が一番大変なのです。下地が硬くて硬くてなかなか研げないのです。ヒビの入ったりところに下地漆を充填してさらっと研いで中塗、上塗とする方法もありますが、これだと、しばらく使っているうちに、また、ヒビがはいってしまいます。私たちは、そうならないようにするためにヒビの見えなくなる層まで研ぐのです。そして、下地をやり直します。研ぐのが大変で、硬いのなんのってペーパーなんかだと3日かかっても出来ないくらいです。そこで、イボイボだらけの電動ドリルでそっときれいにとぐのです。それでもお椀一個当たり30分くらいかかってしまいます。お椀が割れないように丁寧に研がなくてはいけません。
なんだか脱線してきましたので話を元にもどします。輪島塗の下地技法は本堅地に加えて布着せを施しています。寒冷紗という麻布を木の弱い部分や使っていて欠けたり割れやすい部分に布を貼るのです。そうすることによって漆器をより丈夫にするわけです。また、下地に混ぜる粉が輪島独特で珪藻土を焼いて粉にしたもので輪島地の粉と呼ばれています。この粉を混ぜることによって塗面を丈夫にし打ち込みが入って水がついても吸い込まないではじいてくれるすばらしい塗面が出来あがるのです。
若島基京雄(わかしまきみお)
全国を行商して歩いた祖父・父は、旅先で大変可愛がって頂き、現在でも祖父・父を知るお得意さまが多数ございます。
祖父・父は、「物がなくても売る」達人 営業マンでした。
お客様の前で輪島塗の器の仕上がりのイメージを、すらすらと絵に描いて見せ、仕上がった見本が無くても注文を取りました。器の形や色、蒔 絵・沈金の模様まで、その場で細かくうち合わせができ、仕上がった品は、大変お喜び頂いたそうです。
私もそうなりたいと、自己流ながら勉強し、輪島の技法の全てを頭にたたき込み、
お客様の求める物のイメージを形にしたい、と思っています。
現在は、器物の 形から、蒔絵・沈金の図案までお客様のご要望に合わせ、
自分で作図して制作にあたります。
頭の中で見える仕上がりの姿を、木地師から蒔絵・沈金師に細かく 指定し、
喜ばれる、そして末永く愛して頂ける輪島塗を生み出していきたいと考えております。
輪島漆器商工業協同組合 監査役
石川県輪島漆芸美術館 友の会 事務局長
合気道 奥能登合氣会 会長
輪島漆器大雅堂株式会社 代表取締役