輪島塗大雅堂の姫屠蘇の銚子を渋々半分に切りました。
輪島塗の特徴である布着せが、どの様にして施されているか、お客様に見ていただくためです。
上縁と側面と裏底に、寒冷紗(かんれいしゃ)という麻布が貼ってあるのがわかります。
木取りの仕方によっては、内底に布を貼ることもあります。
この布を貼ることによって、割れやすい木を割れにくくしています。
手前上部の切込みは、持ち手(つる)を取り付けるための切込みです。
少しでも接着面積を多くして、持ち手を取れにくくしています。
向こうのコの字状の切込みは、銚子の口が着くところです。
もう一方の部材にも同じ切込みがあります。
本来であれば両方くっついているものなので、実際は四角い穴が開いた状態となります。
また、塗りの状態としては中塗研ぎの状態です。(中塗りのあと、表面を研いで滑らかにした状態)。
つぎに、拭き上げ(手の油分やほこりなどの付着物をきれいにふき取る工程)そして上塗という工程へ進んでいくことになります。
たまり朱に上塗りすると、下の写真の銚子に仕上がります。
塗り上がってしまえば、どの様な下地になっているのかわからないのが漆器です。
しっかり布着本堅地に塗り上げることによって、輪島塗の堅牢さが保たれるのです。
若島基京雄(わかしまきみお)
全国を行商して歩いた祖父・父は、旅先で大変可愛がって頂き、現在でも祖父・父を知るお得意さまが多数ございます。
祖父・父は、「物がなくても売る」達人 営業マンでした。
お客様の前で輪島塗の器の仕上がりのイメージを、すらすらと絵に描いて見せ、仕上がった見本が無くても注文を取りました。器の形や色、蒔 絵・沈金の模様まで、その場で細かくうち合わせができ、仕上がった品は、大変お喜び頂いたそうです。
私もそうなりたいと、自己流ながら勉強し、輪島の技法の全てを頭にたたき込み、
お客様の求める物のイメージを形にしたい、と思っています。
現在は、器物の 形から、蒔絵・沈金の図案までお客様のご要望に合わせ、
自分で作図して制作にあたります。
頭の中で見える仕上がりの姿を、木地師から蒔絵・沈金師に細かく 指定し、
喜ばれる、そして末永く愛して頂ける輪島塗を生み出していきたいと考えております。
輪島漆器商工業協同組合 監査役
石川県輪島漆芸美術館 友の会 事務局長
合気道 奥能登合氣会 会長
輪島漆器大雅堂株式会社 代表取締役