輪島塗に最も多く使われる模様は何かご存知でしょうか。
それは、植物です。
なかでも多いものは縁起のよい模様です。
たとえば、松竹梅や四君子などです。
松竹梅は日本酒の銘柄でもよく知られている縁起物の代表ですね。
松は、どんなに暑くてもどんなに寒くても、つねに青々と緑を保ち、とげとげの葉は邪気を払うと言われています。
また、竹は粘り強く雪の重さにも耐え、節があることから上に行ってもさらに上があるという人生訓にも例えられます。
そして、梅は寒い冬を乗り越え一番に花が咲くところから、耐え忍んで一氣に成功するという意味があります。
どれも私たち日本人が好む謂れがあります。
四君子(しくんし)は、梅、蘭、菊、竹の柄のことで、これに松を加えて五聖(ごせい)と言ったりします。
松竹梅に菊と蘭が加えられた模様というわけです。
菊は重陽の節句や養老の滝に謂われるように長寿を意味し、蘭は優雅な君子の立姿に似ており高貴な香りを醸していると謂われています。
これらの模様はすべてをひとつの器物に描くこともありますが、それぞれが素晴らしい意味合いを持った植物なので、単独でもよく使われています。
漆器は平安時代の頃からお祝いの席によく使われたので、縁起のよい模様が好まれたわけです。
今回はこのくらいにして、次回は、秋草についてお話したいと思います。
若島基京雄(わかしまきみお)
全国を行商して歩いた祖父・父は、旅先で大変可愛がって頂き、現在でも祖父・父を知るお得意さまが多数ございます。
祖父・父は、「物がなくても売る」達人 営業マンでした。
お客様の前で輪島塗の器の仕上がりのイメージを、すらすらと絵に描いて見せ、仕上がった見本が無くても注文を取りました。器の形や色、蒔 絵・沈金の模様まで、その場で細かくうち合わせができ、仕上がった品は、大変お喜び頂いたそうです。
私もそうなりたいと、自己流ながら勉強し、輪島の技法の全てを頭にたたき込み、
お客様の求める物のイメージを形にしたい、と思っています。
現在は、器物の 形から、蒔絵・沈金の図案までお客様のご要望に合わせ、
自分で作図して制作にあたります。
頭の中で見える仕上がりの姿を、木地師から蒔絵・沈金師に細かく 指定し、
喜ばれる、そして末永く愛して頂ける輪島塗を生み出していきたいと考えております。
輪島漆器商工業協同組合 監査役
石川県輪島漆芸美術館 友の会 事務局長
合気道 奥能登合氣会 会長
輪島漆器大雅堂株式会社 代表取締役